死亡事故における逸失利益の計算と弁護士を入れるべき理由
なぜ死亡事故は弁護士に依頼するべきなのか?
「うちの基準だと、これしか出ません…」
「被害者の方にも過失がありますので…」
「保険っていうのはこういうもんですから…」
これは保険会社がよく使う常套句です。実は、保険会社の担当者は本来よりもずっと安い基準で示談金を持ってくることがほとんどです。
しかし、そんなことは被害者のご家族は知りません。
「保険会社の人がそう言ってるんだから、きっと、そうなんだろう」
「確かに、こちら側にも過失があるようだし、しょうがないか・・・」
「保険会社から提示されてる金額も少なくないから、こんなもんかな・・・」
そう思って、保険会社から提示された金額で手を打ってしまっている人が実は世の中には大勢いるのです。そして、「自分が妥協してしまったこと」「裁判をすれば本当はもっと高い金額になったこと」も知らないでいる人が非常に多いのです。
ですから、死亡事故や重度後遺症が残るような事故の場合、先ずは、弁護士に相談されることをオススメします。
しかし、そうはいっても、相談に来られない方がいらっしゃいます。
毎日の忙しさに追われてしまい、大変なのは分かりますが、相談に来られないのは本当にもったいないことです。風邪を引いてしまったら、会社をお休みして、病院に行くわけですから、人が1人、亡くなってしまった費用のことなんですから、会社をお休みしてでも、ご相談にお越しいただいた方が良いと思います。
交通事故というのは、過失の算定割合も決まってますし、損害賠償金の算定基準も決まっています。
しかし、色々なケースがあるのです。例えば、派遣で来ていた人が一般道路ではなく、会社の敷地内で運搬用のトラックにひかれて亡くなってしまったというケースがありました。
この場合、遺族の代理人として、次のように争い、裁判所にも認めて貰いました。
「裁判所が用いる過失割合の基準と一見同じような場合であっても、それは一般道路での基準であって、会社の敷地の道路にそのまま適用されない」
「亡くなってしまった方が派遣労働者であったため、給料が少なかったのですが、そのような少ない給料ではなく、将来正社員として働く可能性が高かったから、平均賃金額(賃金センサス)を基に算定すべきだ」
これら個別具体的なことについて、どれだけ依頼者の利益を守れるかが弁護士の腕の見せ所になります。
このようなことは、ご家族と保険会社の当事者間だけで話し合うのではなく、第3者の法律の専門家にきちんと相談することが、自分の利益を守ることになるのです。
逸失利益とは被害者死亡により絶たれた将来的な収入分
事故で突然にして命を奪われた被害者やその遺族は、今まで通りの生活やこれから先の可能性が全て無くなるという、大変な状況に立ち向かわなければなりません。
事故がなければ本人は死亡することもなく、家族に支えられながら毎日仕事に勤しみ、幸せな生活を送ることができたはずなのです。
1人の人間とその家族の日常を壊され、未来を奪われたことに対し、遺族は加害者にきちんと賠償させる必要があります。
特に、将来的な経済的損失の部分については、逸失利益として正当な金額を支払ってもらわなければなりません。
死亡事故における逸失利益の計算方法
死亡事故における逸失利益は、以下の数式で金額を算出します。
- 死亡逸失利益={基礎収入額×(1-生活費控除率)}×就労可能年数に対するライプニッツ係数
基礎収入額
逸失利益の計算を行う上で、死亡被害者が生前に得ていた年収額を当てはめます。
生活費控除率
将来的に得られたであろう収入分の請求においては、生きていれば当然に発生する生活費分を控除して計算しなければならず、以下の割合を差し引く形で行います。
本人が一家の支柱だった場合 |
40%(扶養者が1名の場合) 30%(扶養者が2名の場合) |
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本人が女性だった場合 | 30%(ただし女子年少者は将来的な役割を考慮して40%程度とする場合がある) |
本人が男性だった場合 | 50%(年齢に関わらず) |
就労可能年数
生きていれば仕事に従事できた年齢の上限を67歳とし、事故死亡時との差を就労可能年数として考えるため、例えば40歳で死亡した人の就労可能年数は27年間となります。
幼児や学生等の未就労者の場合は、就労開始年齢を18歳あるいは22歳と考え、その差を就労可能年数とします。
67歳以上の人については、事故死亡時における平均余命の2分の1を就労可能年数として採用することが一般的です。
ライプニッツ係数
死亡被害者は、逸失利益として将来収入の分を加害者に請求し、一括で支払ってもらいます。
しかし、本来なら長期に渡り定期的に得られる収入を一括で受け取った場合、仮にその金銭を運用すれば利息を得ることもできるため、逸失利益の本来目的から逸脱する可能性があります。
このような状況は公平とは言えないという考え方から、利息分を控除する方法として、就労可能年数に対応するライプニッツ係数を使い、金額を調整することになります。
職業による基礎収入の考え方
逸失利益の計算は死亡者本人の生前の収入状況をベースとして行われますが、その就労状況によって採用される基礎収入額は異なります。
サラリーマン等 | 定期的に給与を受け取るサラリーマン等は、事故前年度の源泉徴収票で収入額を証明します。 |
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個人事業主等 | 自営業者や個人事業主等は、事故前年度の確定申告書により収入額を証明します。ただし、申告額と実際の収入額が異なることも多く、実情をいかに証明するかが困難な場合もあります。 |
未就労者 | 幼児や学生等、就労可能年数に達していない者の場合、厚生労働省が公表する賃金センサスに基づき、年齢別平均賃金等から該当する年収額を採用します。 生きていれば大学進学したであろうと考えられる場合は、大卒の年収を基準とすることもあります。 |
主婦 | 家事に従事している主婦は報酬をもらっていないことから、この場合も賃金センサスから女子労働者の平均年収額を利用します。 ただし、賃金センサスを超えるパート収入等があった場合は、パート収入を基礎収入額として考えます。 |
煩雑な逸失利益の計算と交渉は弁護士に任せるのがベスト
賠償金を構成する要素は各種あり、中でも慰謝料や逸失利益の計算は様々な状況が考慮されて決まるものだと言えます。
死亡事故問題について知識や経験がなければ、加害者側に立つ保険会社の良いように話が進められてしまい、遺族は何もわからないまま示談に合意してしまうことも少なくないのです。
家族を死亡に至らしめた大変な事故であるにも関わらず、不十分な額しかもらえなければ、死亡した本人や遺族の悲しみを埋めることは難しいと言わざるを得ません。
しかし、弁護士を入れれば、難しい計算や考慮されるべき状況を加味して逸失利益を計算してくれますし、相手方保険会社に対して最大限の譲歩を迫り、十分な金額を獲得できる可能性が一気に高まります。
弁護士がきちんと対応すれば、賠償金額が一桁変わることもあるのが交通事故対応の世界ですから、決して遺族だけで何とかしようとせず、積極的に専門家である弁護士の力を借りることが望ましいのです。
当事務所では交通事故相談は24時間の受付を行っていますので、ぜひ一度ご相談頂くことを強くお勧めします。
前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表弁護士
出身地:北海道岩見沢市。
出身大学:北海道大学法学部。
主な取扱い分野は、交通事故、離婚、相続問題、債務整理・過払いといった個人の法律相談に加え、「労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」も取り扱っています。
事務所全体で30社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。