高次機能障害を認めてもらい適正な後遺障害等級を獲得するためには
事故に起因する高次脳機能障害が認められた場合、賠償金額は非常に高額となります。
ただし、外から確認しにくい障害であることから、後遺障害等級申請は困難を伴うとされています。
ここでは、高次脳機能障害と認めてもらうための基準や、適正な等級を獲得するための注意点について解説します。
高次脳機能障害で見られる諸症状
事故で脳に損傷を受けた場合、その程度によっては以下のような諸症状が現れることがあります。
記憶障害
物事を覚えていられないため、どこに何を置いたか忘れることが多く、何度も同じ質問をするようになります。
注意障害
1つのことに集中することが難しいため、並行作業が困難になったり作業ミスを繰り返したりします。
遂行機能障害
目的を達成するための一連の行動が難しくなり、自ら計画通りに動くことができず、1つ1つの行動に対して人からの指示が必要になります。
社会的行動障害
感情のコントロールが難しくなるため、激昂したり暴力をふるったりします。また、我慢ができずわがままになり、興奮のあまり大声で怒鳴ることもあります。
上記のような症状を高次脳機能障害と呼び、被害者本人が生きていく上で重大な支障となるため、大変深刻な状態であると言えます。
高次脳機能障害の診断基準
高次脳機能障害と診断されるには、上記の症状に加え、以下の医学的基準を満たしている必要があります。
事故と症状因果関係が確認できる
高次脳機能障害と思われる各種の症状が発現しており、その原因が事故による脳へのダメージであることが確認できること。
認知的な障害が強く現れ、それら症状が本人の社会生活を著しく阻害していること。
検査で脳に異変が起こっていることが確認できる
MRI等の画像検査により、各症状の原因になっていると思われる脳の異変が確認されていること。
または、医師の診断書の記載事項から脳の病変が確認できること。
診断の対象外となるケース
当該事故を除く先天的・後天的な怪我や病気による症状は対象外となる。
上記の全てを満たす場合において高次脳機能障害と診断され、後遺障害等級としては9級から1級のいずれかが該当することになります。
9級の場合、健康な人と同じように働くことができるものの、注意力の維持困難や効率の悪さから健康な人と同等な仕事ができない状態を指します。
1級は、食事や排泄等の生活機能が広範囲に障害を受けており、介護を要する状態を指します。
高度脳機能障害が事故の後遺障害として認定される条件
医学的には高次脳機能障害との診断を受けても、事故による後遺障害の条件を満たしていなければ、適正な等級と賠償金を得ることができません。
後遺障害等級申請は、相手方の自賠責保険会社を経由し、損害保険料率算出機構が提出書類を精査して認定を行いますので、被害者側としては機構に認定してもらえるような材料を示す必要があります。
事故と高次脳機能障害との因果関係を証明する
機構では以下の条件に該当するかどうかを確認しますので、主治医や弁護士と慎重に準備を進める必要があります。
- 交通事故が原因となって脳に損傷を負い高次脳機能障害となったこと
- 医師により高次脳機能障害として症状固定の診断を受けたこと
- 発現する各症状が医学的に説明のつくものであること
- 自賠責保険による後遺障害等級に該当すること
特に重要なのは、事故と高次脳機能障害の因果関係であり、申請する被害者はこれを証明しなくてはなりません。
因果関係を証明するためには、事故様態や医学的所見等を総合して判断し、第三者が納得するような材料を出していく必要があるため、その作業は非常に難しいものとなります。
例えば、次のような状態が認められた事実を示す書類が因果関係の証明を助けます。
- 事故後に6時間以上の昏睡状態があった
- 事故後に1週間以上の意識障害が認められた
- 事故により脳挫傷・くも膜下出血・びまん性軸索損傷の診断を受けた
- 事故直後と治療経過後の画像診断で脳の継続的な萎縮あるいは拡大が確認できた
因果関係の証明は決して簡単ではなく、専門的な知識が不可欠となります。
このため、適切な申請ができるよう、なるべく早めに弁護士に相談して申請に備えることが大切です。
家族が高次脳機能障害になったら速やかに当事務所までご相談を
高次脳機能障害は大変重篤な後遺症であるため、本人や家族の生活を一変させることになります。
本人は治療に励み、家族は看護や介護に尽くし、十分大変な思いをしているところに、大変困難な後遺障害等級申請を行わなければなりません。
だからこそ、ぜひ当事務所弁護士まで速やかにご相談頂き、現在置かれている状況を理解し、今後どのように行動すべきか把握するよう努めることが重要です。
後遺障害等級申請では医師に診断書を作成してもらいますが、適正な等級を得るために必要な事柄が記載されていないケースも見られます。これは、医師が賠償金問題のプロではないことから起こるのであり、その分、事故や賠償金問題のプロである弁護士が丁寧なフォローを行う必要があります。
高次脳機能障害が後遺障害として認められれば、その賠償金額は非常に高額です。
難しいことだからと言って保険会社に任せてしまうと、相手の都合の良い内容で示談に合意してしまうことになりかねません。
ぜひ、専門家である当事務所弁護士にご一報頂き、加害者から最大限の賠償金を獲得できるよう準備を進めていくことを強くお勧めします。
前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表弁護士
出身地:北海道岩見沢市。
出身大学:北海道大学法学部。
主な取扱い分野は、交通事故、離婚、相続問題、債務整理・過払いといった個人の法律相談に加え、「労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」も取り扱っています。
事務所全体で30社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。