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2016年6月 3日 平成22年(ワ)第452号求釈明事項に対する回答及び原告の稼働状況・収入

 前回期日における求釈明事項に対する回答及び原告の稼働状況・収入については,以下の通りである。なお,略称等は,本書面で新たに用いるもののほか,従前の例による。

第1 求釈明事項について
 1 青色申告について
   原告は,本件事故のあった平成13年度から青色申告を始めている。なお,平成13年度は訴外◎を専従者として届けていなかったため,経費否認されている(甲11)。
 2 専従者給与の増減
   本件事故直後,訴外◎の給与は日給月給制(給与は日割で計算して月給で支払う方式)で支払われていた。訴外◎は農作業期は,原告所有の農地で農作業を行い,冬期間は除雪などのアルバイトをしていたが,年度によっては農作業期中に別の仕事をするために欠勤をしていたこともあった。そのため,日給月給制での給与額が減少し年度によって訴外◎の専従者給与に増減が見られるのである(甲7の3~7)。なお,その間の訴外◎の労力の穴埋めは臨時の従業員を雇用していた。
   また,訴外◎は平成20年に結婚してからは,独立して生計を立てるようになったため,事業専従者から外れた(甲7の8,7の9)。給与も月給制とした。

第2 原告の稼働状況の実態
 1 本件事故前より,原告は農業を営んでいたが,妻に経理を任せていたほか,収穫期等で臨時に人を雇用する場合を除くと,ほぼ原告一人が農作業を行っていた。
 2 しかし,原告は本件事故により,右前頭葉脳挫傷,第1腰椎圧迫骨折,頸椎捻挫,右股関節捻挫等の傷害を負い,旭川赤十字病院及び美瑛町立病院に平成13年6月30日から同年11月28日までの間入院し,農作業を行うことができなくなったので,当時▲株式会社で勤務していた原告の長男である訴外◎が会社を退職して原告に代わって農作業を行うようになった。実際,平成13年度は本件事故のために夏の防除作業が出来ず,馬鈴薯の売り上げが著しく減少している(甲15号証2ページ)
 3 原告は退院した後も,頻繁に美瑛町立病院に通い,リハビリ等の治療を受けていた。また,原告は,本件事故の後遺症により,後方を振り返ると痛みやふらつきが生じたりするほか,長時間集中して作業をすることができなくなっていた。そのため,原告は,作付けの内容を決定したり,訴外◎や臨時雇いの従業員に対し農作業の段取りを決定・指示するような現場監督のような仕事を行うことしかできなくなった。
 4 実際の農作業に関しては,トラクターなどの農作業用の車両を運転して車庫と畑の間を往復させたり,収穫物などのトラックへの積込みや積卸しといった短時間で済む軽作業をすることしか出来なくなり,畑の中でトラクター等の機会を使った土おこし,種まき,農薬散布,収穫といった中心的な農作業は,後方を振り返って確認したり,長時間集中しなければならない作業であることから,原告に代わって,訴外◎や雇用した従業員が行うようになったのである。
 5 以上のように,本件事故前は,「農作業全般は原告,経理は妻,繁忙期に臨時で雇用」という事業形態であったのが,本件事故後は,「農作業は訴外◎や臨時雇いの従業員,経理は妻,繁忙期にはさらに臨時雇用,原告は農作業の補助や作付け・段取りの決定」という事業形態に移行した。
   したがって,原告の農業収入における原告の貢献度は,事故後著しく低下したのである。
    
第3 原告の収入について
 1 甲7の1~9号証,甲8の1~6号証,甲9の1~2号証によれば,原告は本件事故後も事故前と変わらない程度の収入を得ているように思われる。
   しかしながら,原告らによる以下の経営努力や,天候の変動などの自然現象,及び国の政策に基づく補助金受給の結果,原告の収入が外見上減少しなかったのである。
  (1)平成11年度,12年度が天候不順で農業収入が減少していたこと
     平成11年度,12年度は,ビート生産量が根グサレによって減少し,収量減に備える共済金を掛けていなかったこともあり,通年より農業収入が減少した。また,第2の2で述べたように,本件事故のあった平成13年度は,本件事故のために夏の防除作業ができず馬鈴薯の収穫量が減少したが,共済金を掛けていたため,共済金の交付を受けることができた(甲15号証2ページ乃至3ページ)。
        したがって,休業損害の算出にあたっては,算出の基礎となる事故直前の平成12年度の収入が,通年より低いものであったことを考慮する必要がある(甲15号証4ページ)。
  (2)農地の耕作面積を増大させたこと
      本件事故後,当時20代とまだ若い訴外◎が農作業を中心的に行うようになったこともあり,原告は農地を借り受けるなどして耕作面積を拡大していた。
      また,平成15年3月7日,原告は訴外丸森茂治との間で農業経営基盤強化促進法に基づく売買により,上川郡□に所在する52667㎡の農地を取得した(甲12)。
    (計算式)
      25,072+1,781+1,990+11,716+12,108=52,667(㎡)
    
      さらに,同年11月7日,原告は訴外葛榮一との間で農業経営基盤強化促進法に基づく売買により,□に所在する387㎡の農地を取得した(甲13)。
      これら農地の賃貸借及び売買により,原告の耕作面積は拡大し,収穫量が増加した。耕作面積の拡大による農作業の増加に対しては,臨時で従業員を雇用するなどの対策をとったが,結果として,人件費の増大を上回る農業収入がもたらされたのである。
  (3)国からの補助金の支給
      毎年度,国から「とも補償奨励金(転作奨励金)」が年間100万円程度支給されるほか,本件事故のあった平成13年度から中山間助成金が年間100万円程度支給され,雑所得として申告している(甲15号証1ページ)。さらに,平成17年,18年には,国から「産地づくり交付金」「耕畜連携維持交付金」の支給を受け,雑所得として申告している(甲7の5 2ページ目,甲7の6 2ページ目)。
      これらの補助金は,原告の稼働の有無に関係なく支給されるものであり,これをもって休業損害の存在を否定することはできない。
  (4)相場の変動
     原告が作付けする農作物はキャベツ・小豆・馬鈴薯・ビート(てんさい)等であるが,これらの相場は,全国的な収穫量次第で時として1.5~2倍程度の変動が生ずる(甲14)。現に原告の農産物の販売額も大きく変動している(甲15号証2ページ)。
     これらの相場の変動による収入の増加は,原告の稼働とは関係なく生ずるものであって,休業損害の存在を否定する根拠とはならない。
  (5)減価償却費
     農業用機械については,通常,税務上の耐用年数を経過しても機械を使用する。一般的には耐用年数以上に機械を使用していけば,修繕費が多くなるとも思われるが,甲15号証3ページ「4.減価償却費の状況」の一覧表より,耐用年数を経過しても修繕費が増加しているという事情は見られない。
     したがって,減価償却費の多寡は,農業生産性にそれほど影響を及ぼすものではなく,各年度の業績を評価する上では,減価償却費を経費から控除すべきである。
  (6)農業収入における原告の貢献度の低下
     第2で述べたように,原告が本件事故に遭ったため,訴外◎が当時勤務していた会社を退職して,原告に代わって農作業を行うようになった。農作業の段取りなどは農業の経験豊富な原告が指示していたものの,農作業の中心は,本件事故を境に原告から訴外◎に移ったのである。
     農業経営において,農作業が中心であることは言うまでもないが,訴外◎が農作業の中心を担うようになったこと,収穫期以外で臨時で人を雇うなどしていたことにより,原告が農作業のほぼ全てを担っていた本件事故前と比較して,本件事故後の原告の農業事業収入に対する貢献度は著しく低下したのである。
 2 以上のように,原告は,訴外◎に農作業の中心を担わせ,耕作面積の拡大等を行うなどの経営努力により,結果として,本件事故後の収入の減少を防いでいたのである。
   さらに,第2で述べたように,原告経営の農家の実態として,原告が稼働できないことにより,原告が農作業のほぼ全てを担っていた本件事故前と比較して,本件事故後の原告の農業事業収入に対する貢献度は著しく低下したことは明らかであるから,本件事故により少なくとも貢献度が低下した部分の休業損害が発生していることは明らかである。



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