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2016年6月 2日 平成24年(ワ)第26号


札幌地方裁判所判決
平成24年(ワ)第26号
損害賠償請求事件
平成25年3月22日小樽支部判決


       主  文

 1 被告は、原告に対し、1006万1891円及びこれに対する平成22年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 原告のその余の請求を棄却する。
 3 訴訟費用は、これを10分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

       事実及び理由

第1 請求
   被告は,原告に対し、1112万1891万円及びこれに対する平成22年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
   本件は、原告が、自動車を運転中、被告の運転する自動車に追突されて傷害を負ったとして、自動車損害賠償補償法3条又は不法行為に基づき、治療関係費、後遺障害による逸失利益、慰謝料等の損害賠償として1112万1891円及び不法行為の日(上記交通事故の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 1 前提事実(争いのない事実及び掲記の証拠等により容易に認められる事実)
 (1)追突事故の発生及び原告の負傷(争いがない。)
   ア 次のとおりの衝突事故が発生した(以下「本件交通事故」という。)。
     日時 平成22年8月11日午後8時55分
     場所 北海道小樽市桂岡町1番先路上
     事故態様 上記場所において、原告が札幌方面から小樽方面に向けて自動車(普通乗用自動車。以下「原告車両」という。)を運転して走行中、信号に従い停車したところ、被告が前方を注視せずに普通乗用自動車(以下「被告車両」という。)を運転していたため、停車していた原告車両の後部に衝突した。
   イ 原告は、本件交通事故により、頸椎捻挫、外傷性頚部症候群及び外傷性仙腸関節症の傷害を負った。(甲2ないし4)
 (2)通院治療(争いがない。)
    原告は、(1)イの傷害により、症状固定までの294日間の間に次のとおり通院して治療を受け、これに要した治療費は118万3586円、通院交通費は1万1650円であった。
  (ア)治療法人ひまわり会札樽病院
     平成22年8月11日(実通院日数1日)
  (イ)医療法人手稲前田整形外科病院
     平成22年8月12日~同月31日(実通院日数9日間)
  (ウ)医療法人社団太田整形外科医院
     平成22年9月2日~平成23年5月31日(実治療日数129日間)
  (エ)社会福祉法人北海道社会事業協会小樽病院
     平成23年3月29日(実通院日数1日)
 (3)休業損害(争いがない。)
    原告は、本件事故により負傷して休業せざるを得なくなり、これによる休業損害は19万4915円であった。
 (4)症状固定(甲4、弁論の全趣旨)
    原告の傷害は、平成23年5月31日、同日までの治療に対し症状は一進一退を繰り返しているとして、症状固定と診断された(以下、原告の後遺障害を「本件後遺障害」という。)。傷病名は外傷性頚部症候群、その自覚症状は、左上肢しびれと灼熱感、頚部痛、両後頭部痛であり、他覚症状及び検査結果は次のとおりであった。    頚部神経根の圧痛 右-左+
        ジャクソンテスト 右-左+
        スパーリングテスト 右-左+
        モーレーサイン 右-左++
        筋力MMT 上腕二頭筋 右5左4 上腕三頭筋 右5左4
        左上肢の知覚鈍麻
 (5)後遺障害診断(甲5、弁論の全趣旨)
    本件後遺障害は、平成23年10月3日、医学的に証明可能な痛みやしびれなどが持続しているとして、自賠法執行令別表第2の12級13号に該当すると判断された。理由として、上記(4)の自覚症状は、頚椎部の画像上、椎間板膨隆による脊髄の圧迫所見が認められ、神経学的にも上記(4)の他覚所見・検査結果が認められることから、他覚的に神経系統の障害が証明されるとされている。
 (6)損害の填補(争いがない。)
    本件交通事故により原告に生じた損害のうち、合計137万8501円が填補された。
 (7)原告の本件交通事故当時の職業及び年収等(甲7、甲9、甲10、弁論の全趣旨)
    原告は、会社員として勤務し、弁当等の配送を行う業務に従事している。原告の本件交通事故当時の年収は、281万0949円であった。
 (8)原告の生年月日(甲2ないし4、弁論の全趣旨)
    原告は、昭和37年4月19日生まれの男性であり、本件事故当時は48歳、症状固定時は49歳であった。
 2 争点及び当事者の主張
 (1)後遺障害による逸失利益(争点1)
   ア 原告の主張
     原告は、本件事故当時48歳(昭和37年4月19日生)の健康な男性であり、本件交通事故がなければ、症状固定後18年間にわたり稼働可能であったところ、12級の本件後遺障害により稼働能力を14パーセント喪失したので、本件交通事故当時の年収をもとに中間利息をライプニッツ方式(係数11.6896)により控除してその逸失利益を算定すれば、次のとおり460万0241円となる。
2,810,949×11.6896×0.14=4,600,241
   イ 被告の主張
   (ア)原告は、本件交通事故当時と同じ会社に勤務しており、現実の減収はなく、逸失利益は発生していない。
   (イ)平成22年10月11日以降は残業についての休業損害も発生しておらず、労働能力の喪失はない。
   (ウ)本件後遺障害は外傷性頚部症候群であり、現実の減収がないこと等に照らし、労働能力喪失期間は7年に限定すべきである。また、60歳の定年に達すれば通常は年収が減ることも考慮すべきである。
 (2)傷害(通院)慰謝料(争点2)
   ア 原告の主張 150万円
   (ア)通院期間は294日間であるから、基本的に143万8000円の傷害慰謝料が認められる。
1,390,000(通院9か月)+{(1,450,000(通院10か月)-1,390,000)÷30×24}=1,438,000
   (イ)増額事由
      次の事情を考慮すれば、傷害慰謝料は150万円を下らない。
     ①原告は、本件交通事故直後の2週間は、自宅療養とされていたが、痛み等によりほぼ寝たきりの状態であった。
     ②本件交通事故により、勤務先からけがにより仕事に支障があることを理由に解雇される寸前まで陥った。
     ③本件交通事故がなければ、平成22年の冬休み、平成23年の春休み又は夏休みに、子どもたちと東京ディズニーランドに行くことを予定していたところ、これを取りやめざるを得なくなったが、原告にとっては子どもたちとの思い出作りは極めて重要なことであり、大きな精神的苦痛を被った。
   イ 被告の主張
   (ア)通勤期間(実通院日数)に応じた額とすべきである。
   (イ)原告が増額の事由として主張する事情は、いずれも増額事由にならない。
     ①自宅療養の点は、通常の慰謝料に抱含されている。
     ②解雇寸前に至ったとの点は、原告が平成22年8月24日(本件交通事故の13日後)から就業を再開していることからすれば、増額事由にならない。
     ③子どもたちとの旅行については、被告に予見可能性がなく、また、原告は就業可能な状態であって、本件交通事故と旅行の取りやめとは無関係である。
 (3)後遺障害慰謝料(争点3)
   ア 原告の主張 400万円
   (ア)本件後遺障害は12級である。
   (イ)原告は、ゴルフ、スキー、バイク等の趣味を持っていたが、本件後遺障害による痛みで、これらを行うことができなくなった。また、原告は、約20年間にわたりバスケットボールプレイヤーとして活動した経験があり、息子にバスケットボールを教えることを生きがいとしていたが、これができなくなった。本来活動的であった原告にとって、これらの活動ができなくなり又は著しく支障を生じたことによる精神的苦痛は多大である。
   イ 被告の主張
   (ア)後遺障害等級に対応した額とすべきである。
   (イ)原告が増額事由として主張する事情は、通常の慰謝料に包含されている。 (4)素因減額(争点4)
   ア 被告の主張
   (ア)平成23年3月29日に実施されたMRI検査によれば、C4/5及びC5/6右骨棘、C2/3及びC3/4左骨棘による脊髄圧迫が確認されているところ、これらの骨棘は、加齢に伴い、本件交通事故の前から長期間にわたって形成されてきたものであり、これが原告の後遺障害の症状(左上肢の症状)に寄与しているから、少なくとも40パーセントの素因減額がされるべきである。
   (イ)原告には、発育性脊柱管狭搾がみられるところ、これはより脊髄圧迫を生じやすくするものであるから、素因減額がされるべきである。
   イ 原告の主張
   (ア)骨棘は、加齢によっても生じるものであるところ、原告の骨棘が加齢性変化の域を出るものという診断はなく、そもそも原告には本件交通事故まで何らの症状もなかったのであり、原告の骨棘は素因減額の理由にはならない。
   (イ)原告の脊柱管前後径は正常下限とされており、明らかな疾患とはいえないし、後遺障害との因果関係も不明であり、素因減額の理由にはならない。
 (5)弁護士費用(争点5)
   ア 原告の主張
     原告が被告に請求することのできる金額は1011万1891円であるから、弁護士費用は101万円が相当である。
      イ 被告の主張
          争う。
          
第3 当裁判所の判断
 1 争点1(後遺障害による逸失利益)について
 (1)前記前提事実(5)のとおり、原告の後遺障害は、自賠法施行令別表第2の12級13号に該当するとされているので、原則として、67歳まで14パーセントの労働能力の喪失が認められることとなる。
 (2)被告の主張について検討する。
      ア 逸失利益が生じていない、あるいは14パーセントの労働能力喪失はないとの主張について
      (ア)証拠(甲9ないし甲15、甲17、乙13)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件交通事故前よりも1か月当たりの休日を1日増やし、その1日の日給分6800円の減収が生じていること、左上肢しびれや頚部・両後頭部の痛み等に耐えながら職務に従事しているが、現在の勤務先に対しては症状についての説明をしていないこと、原告の仕事は弁当等の配送であるが、平成22年10月には配送先である札幌ドームのイベントが前月までと比べて格段に少なく、配送の仕事が減少していたことが認められる。これらの事情に照らせば、現実の減収が現在の程度(1か月当たり日給1日分、本件交通事故前の収入の約2.9パーセント)にとどまっており、また、平成22年10月12日以降に残業できなかったことによる休業損害が発生していない(乙14)のは、原告の努力によるものというべきである。
      (イ)また、証拠(甲8、甲13)によれば、原告は本件交通事故当時転職を検討中であったところ、本件後遺障害により、パソコンを使用するために下向きの同じ姿勢を継続すると、頭痛、頚部から左にかけてのしびれ等が現れ、机に座って30分と作業をすることができない状態になっており、転職をする場合には後遺障害による職種・収入の制限があり得ることが認められる。このことをも考慮すると、現実の減収が現在の職場における1か月当たり日給1日分にとどまっているからといって、逸失利益がない、あるいは労働能力喪失率が上記の程度にとどまるものということはできず、12級相当の14パーセントの労働能力喪失があるものと認めるのが相当である。
      イ 減収期間・基礎収入を限定すべきであるとの主張について
      (ア)証拠(甲5)及び弁論の全趣旨によれば、原告の後遺障害は、画像上、椎間板膨隆による脊髄の圧迫所見が認められるとして、他覚的に証明可能な神経症状が残存するものとされているが、上記脊髄の圧迫を生じさせているとされる椎間板膨隆が、将来にわたって消失し、これにより症状の改善が期待できることを具体的に認めるに足りる証拠はない。また、被告提出の意見書(乙19)には、本件後遺障害の改善の可能性として、本件交通事故により脊髄に浮腫が生じ、これにより脊髄の骨棘への圧迫が強くなって神経学的症状が生じたのであれば、脊髄の浮腫が消退することにより症状の改善が期待できるとの記載があるが、本件交通事故により原告の脊髄に浮腫が生じ、それにより原告の症状が生じたという機序を認めるに足りる証拠はない。これらによれば、減収期間を限定すべきとの被告の主張は、その前提となる事実を認めることができず、採用することができない。
      (イ)被告は、60歳に達した後の減収の一般的な可能性を指摘するが、本件においては前記のとおり転職が制限され、収入の増加が望めないおそれがあることや、本件交通事故当時の原告の収入(前記前提事実(7)、年間281万0949円)が同年齢の男子の平均賃金(平成22年の賃金センサスによれば、高卒男子45ないし49歳の平均年収は552万8800円とされている。)に比しても比較的低額であることを考慮すると、逸失利益算定に当たり、基礎収入を減額することも相当でない。 (3)以上によれば、本件後遺障害による逸失利益は、原告主張の計算式のとおり、460万0241円となる。
 2 争点2(傷害(通院)慰謝料)について
 (1)前記前提事実(2)のとおり、原告は、症状固定までの間に294日間の通院をしているところ、これに対する慰謝料としては、原告主張の計算のとおり、143万8000円が相当である。
 (2)原告が増額を主張するので検討するに、前記前提事実(7)並びに証拠(甲13、甲17、乙14)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件交通事故による受傷により、平成22年8月13日から9日間にわたり有給休暇を取得し、同月24日から就労を再開したものの、同年10月11日まで残業ができず、勤務先の会社から解雇を示唆される状況であったことが認められる。これは、本件交通事故による受傷により、単なる不都合にとどまらない生活上の不安を余儀なくされたものというべきであり、慰謝料を増額するのが相当である。他方、原告が増額事由とするその余の点については、上記(1)の慰謝料に評価されているものと考えられる。
 (3)上記(1)に(2)の検討結果を考慮すると、本件における傷害慰謝料としては、145万円が相当である。
 3 争点3(後遺障害慰謝料)について
 (1)前記前提事実(5)のとおり、本件後遺障害は自賠法施行令別表第2の12級に該当するものであり、これに対応する慰謝料額としては290万円が相当である。
 (2)原告は増額を主張するので検討するに、証拠(甲13、甲18ないし20、甲23)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、スキーやバスケットボール等の趣味を有し、バスケットボールは約20年間にわたってプレイヤーとして活動してきたものであるところ、本件後遺障害の症状によりこれらが行えなくなっていることが認められる。身体を動かす習慣のある者にとって、これができなくなることによる肉体的・精神的ストレスは大きいことから、この点については慰謝料の増額事由とすることが相当である。
 (3)上記(1)に(2)の検討結果を考慮すると、本件における後遺障害慰謝料としては、310万円が相当である。
 4 争点4(素因減額)について
 (1)証拠(乙18、乙19)によれば、平成23年3月29日に実施されたMRI検査において、左右両方に骨棘による脊髄圧迫が認められるとされているところ、被告は、これらは加齢に伴い長期間にわたって形成されてきたものであり、これが本件後遺障害の症状に寄与しているとして、素因減額を主張する。しかしながら、骨棘は、被告自身が主張するとおり、加齢によっても生じうるものであるところ(甲25、乙25、弁論の全趣旨)、上記骨棘が加齢に伴う変化の範囲を超えており、疾患に該当すると評価すべき事情を認めるに足りる証拠はない。
 (2)また、証拠(乙18、乙27)及び弁論の全趣旨によれば、原告の脊柱管前後径が1.1ないし1.2センチメートルと元々狭く、発育性脊柱管狭窄に該当することが認められるところ、被告は、これをもって素因減額をすべきであると主張する。しかしながら、乙18によれば、原告の脊柱管前後径はなお正常の域にあるものであることが認められ(「正常下限」とされている。)、これが脊髄圧迫を生じさせやすくするものである(乙26)としても、素因減額をすべき身体的特徴あるいは疾患に該当するものと認めることはできない。
 (3)以上によれば、素因減額をいう被告の主張は、採用することができない。
 5 争点5(弁護士費用)について
 (1)1ないし4の検討に、前記前提事実(2)(3)(6)の事実を総合すると、弁護士費用を除く損害のうち未払分は、次のとおり、916万1891円となる。
    治療費 118万3586円
    通院交通費 1万1650円
    休業損害 19万4915円
    逸失利益 460万0241円
    傷害慰謝料 145万円
    後遺障害慰謝料 310万円
        既払金 -137万8501円
        小計 916万1891円
 (2)本件訴訟の内容及び難易度等に照らし、本件交通事故と相当因果関係のある弁護士費用として、90万円を相当と認める。
 6 まとめ
   以上によれば、本件交通事故において被告が賠償すべき金額のうち未払分は、5(1)(2)の合計である1006万1891円となる。

第4 結語
   以上によれば、原告の請求は、主文の限度で理由がある。なお、仮執行免脱宣言の申立ては、相当でないから、これを却下する。

裁判官 上原三佳            



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