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2016年1月16日 交通事故で死亡した57歳の小規模な会社代表者の逸失利益について

交通事故で死亡した57歳の小規模な会社代表者の逸失利益について,役員報酬年額840万円全額を労務対価部分とし,70歳まで稼働可能として算定された事例
札幌地方裁判所
平成20年(ワ)第813号
損害賠償請求事件
平成21年2月26日民事第2部判決
判例時報2045号130頁
民法709条

       主   文

 1 被告は,原告X1に対しては2098万7796円,原告X2,原告X3及び原告X4に対しては各自699万2598円並びにこれらに対する平成19年4月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
 3 訴訟費用は,これを5分し,その2を原告らの負担とし,その余は被告の負担とする。
 4 この判決は,第1項及び第3項に限り,仮に執行することができる。

       事実及び理由

第1 請求
   被告は,原告X1(以下「原告X1」という。)に対しては3965万0089円,原告X2(以下「原告X2」という。),原告X3(以下「原告X3」という。)及び原告X4に対しては各自1321万6696円並びにこれらに対する平成19年4月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
   本件は,交通事故により死亡したA(以下「A」という。)の相続人である原告らが,被告に対し,自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)3条又は民法7099条に基づき,損害賠償の支払を求めた事案である。
 1 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実)
 (1)交通事故(以下「本件事故」という。)の発生
   ア 日時 平成19年4月26日午後8時25分ころ
   イ 場所 札幌市白石区本通9丁目南4番
   ウ 加害車両 被告運転の普通乗用自動車(《登録番号略》)
   エ 被害者 A(当時57歳)
   オ 事故態様 被告が加害車両を運転し,交差点を右折して道路を進行するに際し,道路前方を横断中のAに加害車両を衝突させ転倒させた。
 (2)Aの死亡
    Aは,本件事故により,脳挫傷等の傷害を負い,札幌医科大学附属病院に搬入されたが,本件事故当日午後9時13分ころ,広範脳挫傷により死亡した。
 (3)責任原因
    被告は,自己のために加害車両を運行の用に供しており,また,交差点を右折して道路を進行するに当たっては,前方左右を注視し,右折先の歩行者の有無やその安全を確認して進行すべき注意義務があるのに,これを怠った過失があるから,自賠法3条又は民法709条に基づく損害賠償責任を負う。
 (4)相続
    Aの相続人は,その妻である原告X1,その子である原告X2,原告X3及び原告X4の4名のみであり,原告らは,Aの被告に対する損害賠償請求権を法定相続分に従い,原告X1につき2分の1,その余の原告らにつき各6分の1の割合で相続により取得した。
 (5)損害のてん補
    原告らは,自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)から,本件事故の損害賠償として3006万1110円の支払を受けた。
 2 争点
 (1)過失相殺(事故態様)
   (被告の主張)
    本件事故が発生したのは夜間であり,また,本件事故現場が国道12号線という幹線道路に当たることからすると,被告に前方不注視の著しい過失があることを踏ま
えても,Aの過失は20%とするのが相当である。
   (原告らの主張)
    被告は進路前方左右を全く確認しておらず,被告の過失は重過失とも評価すベきものであるし,夜間とはいえ比較的明るく見通しがよいという本件事故現場の状況等
を考慮すると,被告の主張する過失相殺率は過大である。
 (2)損害額
   (原告らの主張)
   ア Aの損害額
   (ア) 積極損害 6万1510円
     a 治療費  5万5010円
     b 文書費    5000円
     c 入院雑費   1500円
   (イ) 逸失利益 6873万4260円
       Aは,B(以下「B」という。)の実質的なオーナーであるとともに業務全般に従事して,年収は840万円であった。Aは,控え目に見ても,75歳までの18年間はBの代表取締役として稼働する蓋然性があり,その間,上記金額を下らない年収を得ることができた。そして,生活費として30%を控除
して,中間利息を控除すると(ライプニッツ係数11・6895),逸失利益は6873万4260円となる。
      (計算式)8,400,000円×(1-0.3)×11.6895=68,734,260
   (ウ) 慰謝料 3000万円
       本件事故は被告が前方を全く確認しなかったことにより発生したものであり,被告は,道路を横断していたAを約17メートルもはね飛ばして意識不明とした上,その場に放置して逃げ去ったもので,本件事故の態様,事故後の状況,亡Aの年齢等のほか,原告らの悲嘆は察するに余りあることなど一切の事情をしん酌すると,慰謝料は3000万円を下らない。
   イ 原告ら固有の損害額
     原告らは,原告らに生じた次の損害についても法定相続分に応じて負担する。
   (ア)葬儀費用 211万7879円
      原告らは,最終的に,Bが立替払したAの葬儀費用211万7879円を負担すべきである。
   (イ)仏壇購入費 68万円
      Aが死亡するまでAの家には仏壇はなかったから,新たに購入する合理的な必然性があった。
   (ウ)その他 56万7640円
     a 火葬場控え室料金 2万3000円
     b 高速代金 650円
     c 霊柩車,寝台車料金 7万3590円
     d お布施 40万円
     e バス代金・高速代金 7万0400円
   (エ)弁護士費用 720万円
  (被告の主張)
   ア Aの損害額について
   (ア)積極損害は認める。
   (イ)逸失利益は否認する。
      Aの年収840万円(報酬月額70万円)のすべてが労務対価部分ではない。BではAが死亡した直後の2か月相当で原告X3と原告X1の報酬が月額50万円増額されていること,Aと同年齢の男性労働者の平均年収が635万0400円(平成18年賃金センサス)であることを踏まえると,635万0400円を超
える金額は実質的利益配当額であると考えられる。
      また,Aの仕事が現場の指導や施工等肉体労働を伴うものであるから,就労可能年数は平均余命の2分の1として計算すべきである。
      さらに,Aは,妻と長男を扶養者としていたことから,生活費控除率は35%が相当である。
   (ウ) 死亡慰謝料は,2000万円が相当である。
 イ 原告ら固有の損害額について
  (ア)原告らが固有の損害についても法定相続分に応じて負担することは認める。
  (イ)(ア)ないし(ウ)(葬儀費用等)を合計して,社会通念上相当と認められる150万円を限度に認める。
  (ウ)(エ)(弁護士費用)は争う。
第3 当裁判所の判断
 1 争点(1)(過失相殺)について
 (1) 前提事実に後掲括弧内の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実を認めることができる。
   ア 本件事故による衝突場所は,歩車道の区別のある国道12号線(中央線のある片側2車線・車道全幅員16・0メートル。以下「本件国道」という。)の札幌市白石区本通9丁目北1番先の信号機による交通整理がされていないT字路交差点から中央区方面に約31・7mの地点である。指定最高速度は時速50kmに制限され
ている。なお,衝突地点の付近には横断歩道はない。(乙10)
 本件事故現場付近は商店等が立ち並ぶ商業地域であり,左右の歩道上には街路灯が設置されており,本件国道に面したパチンコ店やビル等の照明のため,夜間でも比
較的明るい状態であった。(乙10)
   イ Aは,内装工事の現場である本件国道に面したパチンコ店に向かうために,本件国道を中央区方面に向かって左方から右方に歩いてわたっていた(甲110,112)。
   ウ 被告は,加害車両を運転し,上記T字路交差点を右折して本件国道に入り,本件国道を厚別区方面から中央区方面ヘ向けて時速約50kmで進行中,進路右前方
のパチンコ店のネオンに気を取られて前方を横断歩行中のAの存在に全く気付かないまま,加害車両の右前部をAに衝突させて,Aをはね飛ばし,約17メートル離れた反対車線に転倒させた。被告は,いったん加害車両を停止させたが,Aの安否を確認したり,警察署に報告することなく,本件事故現場から逃走した。その後,被告は,本件事故現場に戻る途中の交番に出頭して自首した。(乙8,9,12,13)
 (2)上記(1)の認定事実によれば,本件事故の主たる原因は,夜間とはいえ比較的明るい場所であるのに,Aの存在に何ら気付くことなく本件事故を発生さ
せた被告の著しい過失によるものといえるが,他方で,Aにも,車両が高速で走行することが予想される本件国道を横断するに際しては,左右の安全を十分に確認す
べきであったといえるから,Aにも2割の過失があるといわざるを得ない。
 2 争点(2)(損害額)について
 (1)Aの損害額
   ア 積極損害(争いなし)                6万1510円
   イ 逸失利益                   5523万4368円
   (ア)後掲括弧内の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
     a Aは,中学校卒業後,職業訓練校を経て,昭和41年4月に電気工事関連の会社に就職し,その後独立してBを引き継いで昭和62年6月にその代表取締役に就任した。(甲98)
     b Bは,自動制御装置の工事設計及び施工,電気工事の請負及び施工等を目的とする有限会社であり,本件事故当時,代表取締役であるAのほかに,取締役として原告X1,従業員としてCと原告X3(昭和54年生)の2名がいた。資本金の額は300万円であり,Bの発行済株式総数3000株のうち,Aが2400株を,その妻である原告X1が600株を有していた。(甲12,98,原告X2本人)
     c Aは,工事現場で作業に従事したり現場監督をしたりするほか,取引先との交渉,契約締結,請求書の発行までの一連の手続や金融機関からの借入れその他の資金繰りに関することなど実質的にBの業務一切を取り仕切っていた。原告X3とCはもっぱら現場での作業等に従事しており,また,原告X1は帳簿をつける程度であった。Aの取締役報酬は年額840万円に固定されていた。Aが死亡した後の平成19年5月に原告X3がBの代表取締役に就任した。(甲12,98,原告X2本人)
     d Bの決算状況は,次のとおりである(各事業年度は毎年7月1日から翌年6月30日まで。1万円未満切捨て)。
     (a)平成13年6月期(甲13)
        売上高9751万円,売上総利益3991万円,営業利益379万円,経常利益309万円,当期利益229万円
     (b)平成14年6月期(甲15)
        売上高1億4414万円,売上総利益3894万円,営業利益604万円,経常利益539万円,当期利益39万円
     (c)平成15年6月期(甲17)
        売上高1億1401万円,売上総利益5633万円,営業利益371万円,経常利益272万円,当期利益261万円
     (d)平成16年6月期(乙1)
        売上高7380万円,売上総利益3271万円,営業利益66万円,経常損失11万円,当期利益13万円
     (e)平成17年6月期(乙2)
        売上高8685万円,売上総利益3926万円,営業利益230万円,経常利益165万円,当期利益160万円
     (f)平成18年6月期(乙3)
        売上高1億0087万円,売上総利益4295万円,営業利益187万円,経常利益107万円,当期純利益71万円
     (g)平成19年6月期(甲22,弁論の全趣旨)
        売上高7696万円,売上総利益4392万円,営業損失8017万円,経常利益3108万円,当期純利益2158万円
 なお,Aの死亡による退職金7980万円及び葬儀費用の支出と生命保険金の収入が発生した。
     (h)平成20年6月期(甲25)
        売上高4486万円,売上総利益2799万円,営業損失146万円,経常損失150万円,当期純損失150万円
     e Aは,妻である原告X1と長男である原告X2の3人で生活していた。なお,原告X2(昭和50年生)は,歩行困難な体幹機能障害のために身体障害者等
級3級に認定されており,無職である。(甲8ないし100,原告X2本人)
   (イ) 上記認定事実によれば,Bは小規模な会社であり,その代表取締役であったAは,現場での作業を含めてBの業務全般を実際に行っており,その職務内容は,他の取締役や従業員のそれと比較して極めて重要なものであること,その報酬額も年齢等に照らしてさほど高額ではなく,本件事故によるAの死亡後にはBの売上高が大きく減少するなどAの死亡の影響が顕著に現れていると考えられることに照らすと,Aに支給されていた役員報酬年額840万円の全額が労務対価部分と認定するのが相当である。また,57歳男性の平均余命は24・90年(平成18年簡易生命表)とされているから,Aの生活状況等に照らし,少なくとも70歳に達するまでの13年間はBの代表取締役として上記の仕事を継続して行い,上記と同額の役員報酬を得ることができたというべきである。さらに,Aの年齢や生活状況等に照らすと,生活費控除率は3割とするのが相当である。
       そうすると,中間利息(13年に対応するライプニッツ係数9・3936)を控除して,Aの逸失利益を計算すると,次のとおり,5523万4368円となる。
     (計算式)8,400,000×(1-0.3)
         ×9.3936=55,234,368円
   (ウ)これに対し,原告は,75歳まで稼働することができたと主張するが,Aの後継者として本件事故後にB代表取締役に就任した原告X3は,本件事故の13年後には40歳を超え,実質的にBを経営する立場に就くことが想定されるから,Aが75歳になるまで現場での作業を含めて上記(ア)と同様の仕事を続けることができる蓋然性が高いとまではいえない。
      また,被告は,Aの年収には利益配当部分を含む旨主張し,本件事故前後の報酬等について,本件事故前は,原告X3の基本給が月額23万円,原告X1の取締役報酬が年額120万円であったのに対し,本件事故後は,原告X3の取締役報酬として月額43万円(ただし,平成19年8月以降は月額28万円),原告X1の取締役報酬が年額180万円に増額されていること(甲21,23,26)が認められる。しかしながら,報酬額等の増額は,原告X3のBにおける立場の変化に伴うものといえるし,また,その増額部分には利益配当的な側面があることは否定できないものの,だからといって,実際に稼働していたAの報酬の中にも同様に利益配当の側面があったことを基礎付ける事情とはならない。しかも,Bは,いわゆる個人企業に近い形態であってAの稼働を不可欠の前提としていたことからすると,労務以外の利益配当としての支給部分を観念することはできないから,被告の上記主張は採用することができない。
   ウ 慰謝料                   2850万0000円
    Aの年齢,家族構成,生活状況,本件事故の態様,本件事故後の被告の態度,原告らが固有の慰謝料を請求していないことその他本件に現れた一切の事情を考慮す
ると,Aの慰謝料として2850万円が相当である。
   エ 合計                    8379万5878円
 (2)原告ら固有の損害額(弁護士費用を除く。)   合計150万0000円
    証拠(甲3,4の1ないし7,甲22,原告X2本人)によれば,Bは,Aの葬儀費用として211万7879円を支出して,雑費として計上したこと,Aの葬儀に関連して合計56万7640円の支払がされたこと,原告らには仏壇がなかったため,Aを弔うために原告X1が仏壇を購入し,その費用として68万円を支払ったことが認められる。
 上記の認定事実に照らせば,本件事故と相当因果関係のある葬儀費用等としては被告が認める150万円とするのが相当である。
 (3)過失相殺及び損害のてん補
    原告らは,原告ら固有の損害についてもAの相続と同じく法定相続分に従った割合で負担することから,上記(1),(2)の損害額を合計した8529万5878円から,過失相殺(上記1)としてその2割を控除すると,6823万6702円(円未満切捨て。以下同じ。)となる。また,原告らが損害のてん補として自賠責
保険から受けた3006万1110円を控除すると,3817万5592円となる。
 (4)弁護士費用
    本件事案の内容,審理の経過,認容額等に照らすと,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は,原告X1につき190万円,その余の原告らにつき各63万円と認める。
 (5)原告らの損害額
    そうすると,原告らの損害額は,原告X1につき2098万7796円,その余の原告らにつき各自699万2598円となる。
 3 結論
   以上によれば,原告らの民法709条に基づく請求は,原告X1につき2098万7796円,その余の原告らにつき各自699万2598円及びこれらに対する本件事故日である平成19年4月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
               札幌地方裁判所民事第2部
                        裁判官 橋本修



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