【後遺障害等級14等級】卸問屋の管理職であったが,事故後に,降格され,退職した男性が,裁判を起こし、保険会社の最終示談額より約400万円増額できた事例
- 獲得金額
- 569万5682円
- 受傷部位
頚椎捻挫及び腰椎捻挫,頚部及び背部に軽度筋痛,右肩から上腕にかけて強い違和感,右上肢のしびれ感,右肘部の痛み,椎間板ヘルニア,座骨神経痛
- 後遺障害等級
14級10号[局部に神経症状を残すもの]椎間板ヘルニアによる局部の神経症状
ご相談内容
被害者 | 男性・事故時46歳,症状固定時48歳・酒類等総合卸問屋の管理職,事故後,降格され,退職 |
---|---|
受傷内容 | 頚椎捻挫及び腰椎捻挫,頚部及び背部に軽度筋痛,右肩から上腕にかけて強い違和感,右上肢のしびれ感,右肘部の痛み,椎間板ヘルニア,座骨神経痛 |
後遺障害等級 | 14級10号[局部に神経症状を残すもの]椎間板ヘルニアによる局部の神経症状 |
獲得金額 | 569万5682円 |
裁判所・事件番号 裁判年月日 |
札幌地方裁判所平成14年(ワ)第5075号 平成15年3月20日判決 |
サポートの流れ
項目 | サポート前 | サポート後 | 増額幅 |
---|---|---|---|
治療費 | 1,989,134 | 1,989,134 | 0 |
通院交通費 | 269,410 | 269,410 | 0 |
後遺症逸失利益 | 750,000 | 2,270,495 | 1,520,495 |
通院慰謝料 | 984,000 | 1,200,000 | 216,000 |
後遺症慰謝料 | 0 | 1,000,000 | 1,000,000 |
損害の補填 | ▲2,258,544 | ▲2,258,544 | |
弁護士費用 | 0 | 447,049 | 447,049 |
計 | 1,734,000 | 4,917,544 | 3,183,544 |
損害遅延金 | 0 | 778,138 | 778,138 |
合計 | 1,734,000 | 5,695,682 | 3,961,682 |
単位:円 |
解決内容
原告に残存した座骨神経痛について,自動車御害賠償責任保険の後遺障害の事前認定において14級10号に認定されていました。
ところが,被告側は,それが,本件事故によるものかどうか明らかでなく,仮に事故に誘発されたとしても,その寄与の割合は30パーセントに満たない(この主張に従うと,労働能力喪失率が1.5ということになる。)などとし,労働能力喪失期間は3年間に限られると主張しました。
しかし,裁判所は,後遺障害等級認定14等級の労働能力喪失率5パーセントを基礎とし,喪失期間を6年間と認めました。
その結果,後遺障害としては、もっとも低い等級の事案である本件において、後遺障害関係の損害だけみても,保険会社の最終提示額が75万円であったにもかかわらず、裁判で327万0495円を確保することができました(252万0495円の増額)。
本件のように,発症した症状が既往症・加齢など事故以外の素因の可能性があったり,降格,退職の原因といった不確定要因が正面から争われる案件では,フィクションで構成される交通損害賠償事件の審理過程において、形式的な平均的な認定にとどまらないよう,個々の損害費目を組み合せ,全体として適正な損害額を獲得すべく,裁判官と主張という体裁でどう駆け引きを試みる,という弁護活動が不可欠です。
そういった場面のほんの一断片に過ぎませんが,本件で提出した準備書面の一つをご覧ください。
【参考】
1 原告の後遺症が14級に該当することは甲5の2からも明らかなことである。
甲4において,椎間板ヘルニア所見の発病原因について,被告主張のようにも読める記載はあるが,「事故による悪化の事実は否定出来ない」との記述からも窺われるように,単に慎重を期するあまりにそのような記載になったにすぎず,本件事故によって発病したことを否定する要因を積極的に指摘しているものではない。
そして,現に原告は,本件事故に遭うまで,座骨神経痛症状を自覚したことはなく,もとよりそのために病院で検査,治療を受けたこともない。2 本件事故当時,A株式会社でB次長として勤務していたところ,本件事故による傷害のため,通院の必要から会議等に十分に出席することが出来ない状況となり,また受傷を原因とする事務処理の遅れが生じていたものであり,そのため早朝7時30分ころには出社する日が続いたものの,これを十全に補完することはできない状態が続いており,社内での立場が日増し悪化していく中,現に,平成12年12月には,内辞で平成13年1月1日付けで管理職より一般営業に降格することを言い渡されていた。
以上のような会社における現実の待遇は,本件事故に起因するものとしか考えることが出来ないし,現に会社との折り合いは日ごとめざましく悪化しており,本件事故に遭遇した結果,原告は,事実上「使い物にならないリストラ対象者」としての扱いを受けるに至ったものである。
このような状況の中で,退職を余儀なくされたものである。
また,被告は,病状固定までの間支障なく業務に従事し休業損害も発生していないと指摘するが,それは,有給休暇を利用したり,上記でも触れたように早朝7時30分ころには出社するなどの方法で補完を試みた結果であって,現に金銭的な意味では休業損害が発生していない以上,休業損害を請求できないのは当然のことであるが,結果的に休業損害が発生しなかったからといって,業務に支障が生ずるような受傷程度ではなかったということはできない。3 しばしば被告のするような逸失利益を時期的,段階的に制限して考えるような主張がなされることがあるが,少なくとも本件のような場合に適用されるべき論理ではない。
後遺症が14級と認定できる以上,請求原因4のとおり,通常なされる逸失利益の算定がなされるべきである。
その場合,上記2のとおりであるから,当時得ていた年収を算定の基礎とすべきであるが,仮に百歩譲って賃金センサスによるとしても,被告主張のような賃金センサス産業計・学歴計・男子全年齢の年収を基礎とすべきではなく,原告の経歴に照らし,大卒・当該年齢の年収(852万7700円)を基礎とするのが相当である。
すなわち,このように百歩譲った年収を基礎とした場合であっても,515万2991円を下らない。
(計算式)
8,527,700×12.0853×0.05=5,152,9914 なお,以上のとおりであるにもかかわらず,何らかの理由で,原告が主張の逸失利益に制限が加えられるのであれば,少なくとも本件における諸般の事情,殊に上記に述べた点を十分に総合考慮し,慰藉料の算定に反映させるのが相当である。
前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表弁護士
出身地:北海道岩見沢市。
出身大学:北海道大学法学部。
主な取扱い分野は、交通事故、離婚、相続問題、債務整理・過払いといった個人の法律相談に加え、「労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」も取り扱っています。
事務所全体で30社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。
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