交通事故・後遺症無料相談TOP > 事例集

事例集

交通事故 取扱事例集

〔裁判所名〕 札幌地方裁判所民事第1部判決
〔判決日付〕 平成9年1月10日
〔事件番号〕 平成7年(ワ)第5132号
〔事件名〕   交通事故に関する損害賠償請求事件
〔登載文献〕 判例タイムズ990号228頁  (全文

 

  • 会社の代表者の死亡による逸失利益について現実の報酬を基礎として算定された事例
  • 会社代表者の死亡事故につき,保険会社が提示した最終示談提案額は6000万円弱であったが、判決の認容額が8100万円強となり,遅延損害金も含めると9200万円余りの支払になった事例

概要

被害者は,走行中の普通乗用車に同乗していたが,交差点を赤信号無視して進行してきた加害者運転の普通乗用自動車に追突され,死亡するに至りました。

被害者は,グループ企業経営者であったところ,一般に会社役員の報酬中には労働の対価以外に利益配当部分が含まれているとされ,加害者側(保険会社)もそれに類する主張をしましたが,裁判所は,当方の主張を容れ,被害者の得ていた収入はすべて労務の対価であると評価しました。

本件は,判例誌『判例タイムズ』(990号228頁)で,「会社の代表者の死亡による逸失利益について現実の報酬を基礎として算定された事例」として紹介されました。

裁判所の認容額(保険会社の最終提示との対比)

本件は,保険会社最終提示額が5927円8720円であったのに対し,裁判を起こした結果,保険会社から9202万9710円の支払を受け取ることとなり,3275万0990円の増額となった事案です。
損害費目ごとの金額を対比すると,次のとおりです。

  裁判所の判決 保険会社の最終提示  
治療費 121,838 121,838  
死亡逸失利益 48,185,280 44,478,720  
死亡慰謝料 24,000,000 13.500,000  
葬儀費 2,000,000 1,300,000  
総損害額 74,307,118 59,400,558  
損害の填補(既払金) ▲121,838 ▲121,838  
損害の填補後の損害額 74,185,280 59,278,720  
弁護士費用 7,400,000 0 保険会社はゼロ査定
合計(裁判所認容額) 81,585,280 59,278,720  
遅延損害金 10,444,430 0 保険会社はゼロ査定
総計(手取総額) 92,029,710 59,278,720  

現場からのコメント

1 前記『判例タイムズ』の解説で,「本判決は,二つの会社の代表取締役を兼任する者の逸失歴について,現実の報酬額を基礎として算定した事例であり,今後の同種事案の処理上参考になろう。」と評価されています。
この案件について,理論的な興味がある方は,前田尚一法律事務所サイトに掲載した実績・実例の中の判例解説をご覧下さい。

2 裁判官は,当初役員報酬全額を基礎収入とするに躊躇しており,中途で提示した和解金額6653万0848円も,役員報酬の7割を基礎として計算したものでした。
そこで,前記判例解説で述べたように理論武装する一方,中小企業の社長の仕事内容や報酬などについての世間の常識を理解してもらう必要がありました。北海道行政書士会の会報に寄稿したコラム「法律による有利な解決のためのプレゼンテーションをする!!」で,おそらくは決め手となったであろう証拠のことなど,ほんの少しだけですが裏話をしています。興味のあるかたは御一読下さい

解説

1 訴外Aは,平成6年7月14日,札幌市中央区内を走行中の普通乗用車に同乗していたが,同区内の交差点を赤信号無視して進行してきたY運転の普通乗用車に衝突され,死亡するに至った。
 そこでAの遺族であるXらは,Yに対し,自賠法3条,民法709条に基づき損害賠償を請求したが,その逸失利益については,Aは本件事故当時,B社,C社,D社の代表取締役に就任し,年額1380万円の報酬を得ていたから,本件事故に遭わなければ,満61歳から11年間にわたり右報酬を下らない年収を得ることができるとし,生活費3割控除,中間利息控除をしたうえ,計8023万9824円とし,これに慰謝料,葬儀費用,弁護士費用等を加算して総額約1億2700万円を請求した。
これに対し,Yは,会社役貝の報酬には労務対価部分と利益配当部分が含まれているところ,その死亡による逸失利益の損害は労務対価部分に限られるべきであるから,Aの報酬を基礎として逸失利益を算定することは許されないなどと主張した。

2 本判決は,Yの損害賠償責任を肯認したうえ,Aの逸失利益について,Aは,本件事故当時B社とC社から年額960万円の報酬を受けていたから,右収入を基礎としたうえ,稼働年数を61歳から71歳まで平均余命19・66年の約2分の1である10年とし,生活費3割5分,ライプニッツ方式による中間控除をして4818万5280円と算定したが,就労可能年齢を67歳とすべきであるとするYの主張については,Aは本件事故当時60歳をすぎて健康かつ現役で働いていたことを理由に排斥し,また,Aの報酬中の利益配当部分は逸失利益の基礎となる収入から除外すべきであるとする主張については,Aの稼働状況及び年収,他の社員の年収との対比,B社とC社の業績等に照らすと,死亡当時得ていた収入は,すべてAの労務の対価であると評価するのが相当であるとして排斥し,右逸失利益に慰謝料,葬儀費,弁護士費用等を加算して,総額約8160万円の賠償を求める限度で本訴請求を認容した。

3 会社役員の逸失利益は,基本的には一般の給与所得者の場合と同様,現実の給与ないし役員報酬を基準として算定されるが,小規模会社の場合には,役員の報酬の中に実質的には利益配当分が含まれることがあるところから,逸失利益の算定の基礎収入からその分の控除すべきであるとする判例が少なくない(東京地判平6・8・30判時1509号76頁,大阪地判平7・12・15本誌914号215頁など)。しかし,役員の報酬中の労務対価部分を確定することができないときは,賃金センサスを利用することができるし(副田「逸失利益(9)」新交通事故判例百選104頁3照),会社の業績,稼働状況,報酬額,他の役員の年収等に照らし,不相当に高額でないときは,現実の報酬額を基礎とすることも許されなくはないであろう。
本判決は,2つの会社の代表取締役を兼任する者の逸失利益について,現実の報酬額を基礎として算定した事例であり,今後の同種事案の処理上参考になろう。

ご相談お申し込み・お問い合わせ

項目にご記入ください。
※メールでの法律相談は行っておりません。

お名前※必須
電話番号
メールアドレス※必須
連絡方法 ※必須 電話  (通話可能な時間帯: の間 )
メール
どちらでも良い

※ 携帯からの場合はPCメールが受信できるように設定しておいて下さい
法律相談の希望日時 第1希望: 午前 午後
第2希望: 午前 午後
第3希望: 午前 午後
ご質問等 URLを含めたコメントの送信は出来ません。

はい